読了本ストッカー『石の中の蜘蛛』

石の中の蜘蛛 (集英社文庫)石の中の蜘蛛 (集英社文庫)
著者:浅暮 三文
販売元:集英社
(2005-03-17)

2009/11/19読了。




楽器のリペアを仕事とする立花誠一は、都内の防音設備を有したマンションを引越し先に考え、不動産屋と訪れた際に当て逃げに遭います。
幸い頭蓋骨の亀裂骨折だけで済んだものの(いや、普通入院ですよ1週間は!)、急激に音に過敏になり、さらには音が目に見えるまでになってしまいます。
この「音が目に見える」という感じの描写が抜群!
そして前述のマンションに引っ越した立花は、部屋に行方不明になったという前住人(♀)の生活音が刻まれている(例えばフローリングの歪みなどで)ことに気づき、音を収集することで、その住人を追いはじめます。フローリングをスプーンで叩いて、聴診器で音を聴き、家具の位置を割りだし、電子ピアノの位置も割りだし、さらにはよく弾いていた曲まで割りだすところは、圧巻です!

当然(?)便座も叩いて、

立花は便器のカバーを持ち上げ、今度は便座を叩いていった。音はバスタブのときと同様に粘土のようなもっちりとした柔らかい重さが刻まれていた。(中略)
立花の耳には聴診器を通して目の前で女が便座に腰を落としているようにさえ思えていた。女の柔らかい臀部が便座に密着して歪んでいるようにさえ。
立花は指先で便座をなぞった。まるで女の臀部を指先に感じているといった風に。次に床から立ち上がると聴診器を便座に当てながら自分が座ってみた。
へ、へ○○イ(笑)。
日本推理作家協会賞」受賞作だけあってミステリとしても、よく出来ていました。
「五感」といえば『女囮捜査官』。だから解説は山田正紀氏なのかと思いきや、触れてもいないのね……。それが理由ではないのか?
本作をハードボイルドと捉えた解説でした。