読了本ストッカー『フーコーの振り子㊦』



2011/7/8読了。

すさまじい博識!もう全然ついていけません……。
ダ・ヴィンチ・コード』なんて底が浅いと思って読んでませんが、記述師のような浅学な人間にはその辺がお似合いなのか?と思わせる、オカルト学のオンパレード!
テンプル騎士団を<歴史学的に>研究していた主人公が、いじくりまわしてなんとでもなる数秘術を駆使したり、自動車のマニュアルですら、カラバ的オカルト的に読み解いてしまう(「この崇高なるエンジンは、吸引―排気という一連の運動によって生命を維持しています」)とこなんて最高!

一筋縄ではいかない人物で、アッリエをどう定義してよいかわからなかった。その晦渋な懐疑主義、その儀式に対する皮肉な態度、しかも、自分が軽蔑しているあらゆる迷信の威厳を認識させようとする、あのただならぬ秘教に寄せる信仰心。

と評されるあのサン・ジェルマン伯爵の生まれ変わり(いや、だから不老不死なんだけどね)のような哲人アッリエ。

テンプル騎士団、薔薇十字、シオンの議定書レイラインフリーメーソン……出てこないオカルト用語はないくらい。しかも、話がよくわからない!科学史、宇宙開発史もすべてオカルト的に読み替え、すべてフリーメーソンの仕業!しかも主人公たち三人が冗談(?)で作っている。

各自が勝手に空想に耽った結果を持ち寄って意見の交換をしていたというのに、三人とも申し合わせたように、何の正当性もなしに連想をしたり、異常なまでのショートを起こしても平気で結線しながら前進しているように思われた。仮に誰かがそのことを指摘して非難したら、おそらく三人とも自分たちが本気で信用しているのが恥ずかしく思えたほどである。要するに、私たちは他人の論説をパロディーにして、アイロニーの礼儀を弁えながらも、すでに暗黙の了解として自分たちを慰めていたのである。

9割がたワケわからんが、これを読んだあとにはすべての伝奇ものの理論面がウス~く見えてしまうのは必定……。小説的な面白さとは別かもしれませんが。
ウンベルト・エーコってきっとお茶目だと思うのは、私だけでしょうか?