読了本ストッカー『前日島㊤』

前日島(上) (文春文庫)前日島(上) (文春文庫) [文庫]
著者:ウンベルト・エーコ
出版:文藝春秋
(2003-11-08)


2010/8/25読了。

薔薇の名前(㊤は入手済)』も『フーコーの振り子(㊤㊦とも入手済)』も読んでないですが、何となく本書から。

時は1643年。物語はロベルト・ド・ラ・グリーヴが海で遭難し、<ダフネ>という船に漂いつくところから始まります。
その船の向こうには<島>が。語り手はロベルト本人ではなく、ロベルトの手記を元に突っ込みをいれつつ解説する人物(エーコ自身?)です。
なぜロベルトはこの船にたどり着いたのか、なぜ航海にでるはめになったのか、などをロベルトの生い立ちから解き明かします。
磁石が金属を引き付けるように、傷をつけた剣に薬を塗ることで、治癒を邪魔している鉄の力を引き付け、傷を治すという17世紀のトンデモ科学(と一口にくくることはできませんが)<武器軟膏(ウンゲントウム・アルマリウム)>とかなんじゃそりゃ~な蘊蓄(?)が多々。
曰く
口臭のきつい者は、肥溜の上で口を大きく開けていれば口臭が消えるはずです。なぜなら、排泄物の悪臭のほうが喉からのものより遥かに強烈なので、強いほうが弱いほうを引きつけて除去してくれる
そうな。……試してみるか?(笑)

しかしその<武器軟膏>もストーリーに大きく影響してきますし、無駄のない構成。ロベルトが父親に連れられて<カザーレの攻防戦>に参加したくだりは、講談調になってユーモラスさアップしますが、それもまた。

記述師は、読む前にすぐカバーをかけちゃう(裏表紙の解説や帯の惹句を読んじゃわないように)ので、気にしなかったんですが、解説はすべてを要約していますが、決してそれがすべてではない。
現代文学として書かれながら、それを局所的に眺めるとミステリであったり、SFであったり、伝奇であったりと様々な姿を見せることが、エーコのスゴさなのかと、何となく感じました。
エーコ自身による特別図解『前日島』の謎」付き。