読了本ストッカー『思いちがい辞典』

思いちがい辞典 (ちくま文庫)思いちがい辞典 (ちくま文庫)
著者:別役 実
販売元:筑摩書房
(1999-01)

2009/11/4読了。



<本の雑誌>11月号に、雑文家番付が掲載されていました。う~ん、面白そうだけど、とても手が回らないなあと思っていたのですが……。ちょうど本書が出てきたので、まあ雑文(創作ですが)。あの『虫づくし』があまりにも傑作だったので、本書は記述師としてはイマイチ。

<記録癖>では
「日記」中毒の最初の兆候は、「今日は何も書くことがない」と書き始めることで知られる、と言われている。(中略)つまり彼は、このころから生きることの内容を、「書くべき価値のあること」と「ないこと」に区別し始めているのであり、そのように生き始めているということであろう。
「今日も残念ながら書くべきことは何もない」と書き始めることによって、その症状はもうひとつ深化する。殆ど気がつかないことであるが、このとき彼は、「書くべき価値のある」生き方をしなかったことについて、その生き方のためでなく、「日記」のため、悔やみ始めている。
(中略)そしてこの症状は、或る日突然、「今日は書くことがあった」と、喜々として筆を運び始めることによって、決定的なものになる。そのとき既に彼は、生きるために「日記」を書くのでなく、「日記」を書くために生きることを始めているからであり、しかも彼自身、そのことに気付いていないからである。

身に覚えがあるかた、いらっしゃいませんか?

<蒐集癖>
リスが「冬ごもりの準備をせよ」という背後の大いなる智恵にそそのかされてそうしているように、「コレクター」もまた背後の大いなる智恵にそそのかされてそうしているに違いないのであり、我々は、「コレクター」のコレクションを通じて、彼をそうさせた「背後の大いなる智恵」について知りたいのである。何故ならその「背後の大いなる智恵」は、リスに対してその「将来」である「冬」を確実に教えたように(それは、「長い冬」の場合、リスに「多くのどんぐり」を集めさせることまでする)、「コレクター」にもその「将来」を、確実に、教えようとしているに違いないからである。<>実は、「コレクター」自身もそのことをよく知っている。彼らが、「将来はこうであろう」という予見をもたずに、「ひとまず集め始める」のはそのせいだ。(中略)従って、あらゆる「コレクター」は自分自身でそのコレクションを解読することは出来ない。ただ、彼を「コレクター」として認める第三者が、「もしかしたら解読してくれるかもしれない」だけである。

み、身に覚えがある方……