読了本ストッカー:なにもない、ことの異常……『秘事・半所有者』

幼児狩り (1978年)
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秘事・半所有者 (新潮文庫)
秘事・半所有者 (新潮文庫)
著者:河野 多恵子
販売元:新潮社
発売日:2003-02


 


 


2009/2/8読了。


なんで読もうと思ったのか、忘れてしまいました。調べてみると、『ダ・ヴィンチ2008年5月号』で、川上弘美氏が次のように書いていたのでした。



「読み終わって、大泣きしてしまいました。ただ一緒に連れ添うことのすごさを描いて、素晴らしかった」


そんなすごいのかと思って探してみました。感想としては……恐るべし、河野多恵子


長編「秘事」と短編「半所有者」の二編からなる作品集です。
金井美恵子氏なんかだと文体に特徴があるわけですが、河野氏にはそれが(少なくともわかりやすい形では)ない。「秘事」では、ただ坦々と主人公三村清太郎の半生が語られます。その時々ではっとするような性的な挿話があったり……本当に上手いなあ。


たしかに、解説にも書かれていたように<正常が極まって異常になる>といった感じがムンムン。人生が順調に描かれすぎて、どこかでぐちゃぐちゃに破綻するのではないかという緊張感が途切れません。


河野氏は1926年生まれですから……御年83歳?すごいなぁ。これまで知らなかった自らの不明を恥じます。


みいら採り猟奇譚 (新潮文庫)』『赤い唇・黒い髪 (新潮文庫)』『幼児狩り (1962年)』も探してみよう。