読了本ストッカー:ただ舞台のために……『江戸役者異聞』

江戸役者異聞 (河出文庫)
著者:山本 昌代
販売元:河出書房新社
発売日:1993-07


2008/12/8読了。


記述師的<魔人>、澤村田之助をめぐるお話です。皆川博子氏の『花闇』、北森鴻氏の『狂乱廿四考』に次いで3作品目。


本書の特徴は「何も解明されない」というところでしょうか。田之助も死なない(死が描かれない)し、田之助の妹の生死も明かされないし、妻のようだった加茂路のその後も、田之助の子どものその後も明かされない。普通だったら長々と書きそうな、そんなところを、山本氏独自の簡易な文体でばっさりと切り捨てています。そんなに多くのことが書かれているわけではないのに、何か心に残る。そんな本でした。