川端裕人
ハヤカワ文庫
2008/10/6読了。
川端氏の著作は、『夏のロケット』『The S.O.U.P』に続いて3冊目。案外読んでないなあ。全作読もうと思っているのですけど。
菊野脩は、自然写真家を父にもち、世界中を旅して暮らしてきた、小学五年生。今は多摩川の支流である桜川(架空の川です)流域の街で暮らしています。
夏休みを迎えた脩は、桜川である生き物を見つけて、友達と一緒に夏休みの自由研究として観察を始めます。まあ多摩川のタマちゃん騒動みたいなことになるわけですが。
登場人物の一人、喇叭爺の言う
「いいか、多くの者がおぬしらを利用しようとするだろう。その中にはよこしまな者もいれば、正しい者もいる。よこしまな者ははねのければよろしい。だが、正しい者には要注意だ。正しいことが、常によいことではないとおぬしらは肝に命じるべきである」
という言葉。卓見ですねぇ。
一部の自然保護団体による自信過剰気味な行動を指していますが、実際こういった例は多くあると思います。今後タマちゃん騒動のようなことが起こった時には、テレビもこの本を取り上げればよいのに。そしたらみんなちっとは自粛するでしょう。
ちなみに、タイトルの<川の名前>がとても素敵で合理的な概念として出てきます。たしかに海がない県はあっても、川のない県はないわけだしね。
エントリタイトルに引用した神林長平氏による<自分の、あなたの、居場所の位置を示すインジケータ>という言葉も素敵でした。随所に、大学で科学史や、科学哲学を専攻した氏らしい考え方も織り込まれ、冒険小説、成長小説としても大変面白いです。
川端氏のノンフィクションも読んでみたいです。