読了本ストッカー:怪獣版デウス・エクス・マキナ……『笑う怪獣 ミステリ劇場』

笑う怪獣ミステリ劇場 (新潮文庫 に 18-1)
笑う怪獣ミステリ劇場 (新潮文庫 に 18-1)


西澤保彦


新潮文庫


2008/10/3読了。


   人格が入れ替わる機械とか、触れるとコピー人間ができちゃう壁とか、SFチック(あくまでもチック)な作品を連発する西澤保彦氏。本書ではついに(?)怪獣が出てきます。『大密室』に収録されていた「怪獣は密室に踊る」を読んで、続編を書くようなことが書かれていたので楽しみにしていた一冊。


    サラリーマンのアタル、青年実業家の京介、市役所職員の正太郎の三人は学生時代からの悪友同士。この三人がなぜか(本当に答えは提示されない)怪獣やら怪人やら宇宙人やらに出会ってしまい、事件がうやむやに(?)なる連作短編集です。



◆「怪獣は孤島に笑う」



・・・おぉ?これって・・・ミステリか?怪獣が横たわる孤島で(むちゃくちゃだなあ)次々に消えてしまう人間たち。怪獣に食われたのか?それとも姿を見せない人物がいるのか?


◆「怪獣は高原を転ぶ」



・・・やっとミステリらしくなってきました。怪獣はまったく話の流れには関係ないのですが、怪獣が現れたことで、事件が解決するという感じです。


◆「聖夜の宇宙人」



・・・本編では、怪獣は身を潜め、代わりに宇宙人が出てきます(笑)。これ・・・謎は特にないよ・・・な?


◆「通りすがりの改造人間」



・・・本編は、怪獣も宇宙人も身を潜めて、代わりに改造人間が出てきます(笑)。怖っ!これ・・・想像するだに怖いよ~。


◆「怪獣は密室に踊る」



・・・密室アンソロジー『大密室』に収録されていた作品。「怪獣は高原を転ぶ」に続いてデウス・エクス・マキナな怪獣が物語を終わらせます。これこれ、こういうのを待ってたんですよ!


◆「書店、ときどき怪人」



・・・ついにアタルの恋が実るか?という作品ですが、やっぱり・・・。まあやはり怪人がでます。あと○○○○ガールもね。


◆「女子高生幽霊綺譚」



・・・これ、解説で石持浅海氏も書いているように、幽霊である必要はまったくないんですよね。導入方法はくさるほどあるはず。その中から幽霊という導入を選んだのは、やはり怪獣や怪人や宇宙人がこんだけでてきたら、もう幽霊くらいじゃ驚かない、という登場人物(と読者)の精神状態を鑑みて・・・というところでしょうか。


    石持氏の解説の深読みもまた楽し。すべてが怪獣がらみのミステリを想像していたので、残念に思っていたのですが、読み終えてみるとバラエティに富んでいて結構満足な一冊でした。