ハヤカワ文庫
2008/8/12読了。
『グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)』の発売で初めて知った飛浩隆氏。やはり入門編としては短篇集でしょう、ということで(偶然見つけただけだけれど)購入しました。中短篇集かな?
◆「デュオ」
・・・音楽SF。音楽SFといえば高野史緒氏の『ムジカ・マキーナ (ハヤカワ文庫JA)』、山之口洋氏の『オルガニスト (新潮文庫)』がフェイバリット作品としてあるからなあ・・・と思って読み始めましたが、おぉ結構複雑だ。
◆「呪界のほとり」
・・・万丈?破嵐万丈?ダイターン3?・・・かと思っちゃったよ。
主人公・万丈が施された<モラル・マルチプレックス>という思考システムが秀逸!異なる文化規範に出会ってもカルチャーショックを受けないように、相手の文化フォーマットに寄り添うようになる思考システムなんですが、
少し考えればわかることなのだが、モラル・マルチプレックスは使用者よりも相手に都合のいい状態を生みだすだけで、万丈はいわば文化人類的お人好しに仕立てられたわけだった。
おもろい(笑)イーガンのようだ。巻末解説によるとシリーズ化を考えていたとのことで、なるほどいろいろ設定が置き去りな感じは否めません。
◆「夜と泥の」
・・・テラフォーミングされた惑星、ナクーン。土木機械と巨大生物が沼地で格闘する冒頭には唖然! 本当に驚いた(笑)。SE(感覚拡張システム)とかSFガジェットもあり、叙情的なものあり(というかこちらが中心か?)、日本SFの直球という感じでした。
◆「象られた力」
・・・表題作。「夜と泥の」と同じく、<リットン&ステインズビー協会体制>の宇宙史観の下の作品のようです。
ふつうL&S協会は星を売らない。入植者をつのり、星系の運営ノウハウをオリエンテーションして国家をつくらせ、その政府に星をリースする。
イコノグラファー、クドウ・圓が学芸員に依頼されて惑星・百合洋の失われた図形探しに奔走します。菅浩江氏の『永遠の森 博物館惑星 (ハヤカワ文庫JA)』みたいな設定ですね。しかしこれはすごい。都市内の外装や隙間(?)を移動する<移動式アトリエ(?)>とか・・・(笑)。ちょっとメタっぽいところも好みです。
実は『グラン・ヴァカンス』も105円で手に入れているんです。いつ読めるかわからないけど。