読了本ストッカー:言語SFか?幻想SFか?……『幻詩狩り』

幻詩狩り (中公文庫)


川又千秋


中公文庫


2008/7/9読了。


大森望氏の『現代SF1500冊』で知った(たぶん)本書。最近創元SF文庫より復刊されていますが、記述師が読んだのは中公文庫版。


日本SFの王道(?)幻想言語SFです。
1964年代に、フー・メイなる詩人によってものされた散文詩<時の黄金>。その詩をめぐる当時の騒動を描いた章、その日本語訳詩にまつわる現代日本を舞台とする章、そして<幻語>を<狩る>捜査官たちを描く章、なとが入り乱れます。巻末解説の巽孝之氏は、オーウェルの『1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)』と比することで(当然)SFとして評しているんですが、記述師としては伝奇小説よりかと感じました。
特にシュルレアリスムの巨人アンドレ・ブルトン(知ったげしてますが、全然知りませんでした)を主人公として語られる章なんて特に。実在のシュルレアリストたちがバタバタと<幻詩>の犠牲となるのですが、その死は現実なんですね。まぁ、芸術家ってのは、えてして不審な死を遂げるものだと思いますし(そうか?)、その時期も10年以上にわたってるしね。そらたくさん死ぬわ。


それにしても笑ったのが、現代日本編で某デパートがシュルレアリスム展を開こうとするのですが、そのデパートの名前が<西都デパート>。そして文化事業を推し進める会長の名前は<辻見>・・・。シュルレアリスムの本が鬼のように売れるのですが、池袋とか渋谷とか吉祥寺とか・・・そのまんまじゃん!時代を感じるなあ。


最終章にくるとSF以外のなにものでもないストーリーに。小松左京氏や山田正紀氏のSFみたいでした。