読了本ストッカー:<魔人>澤村田之助……『狂乱廿四孝』

狂乱廿四孝 (角川文庫)


北森鴻


角川文庫


2008/7/1読了。


 


第六回鮎川哲也賞受賞作品にして、北森鴻氏のデビュー作です。
脱疽のため、四肢切断の憂き目にあう、三世澤村田之助を中心とする、明治初期の歌舞伎界を描いたミステリ。


澤村田之助といえば皆川博子氏の『花闇 (集英社文庫)』。北森氏もあとがきで「多大な影響と示唆を受けた」と書いています。


記述師の中では、田之助は<魔人>。
どの作品でも、田之助といえば<酷薄><非情>が定番。そして、それが許される(愛憎入り混じってますが)のもまた定番。
感情のおもむくまま暴虐無人に振る舞いながら、あいつじゃあ仕方ねぇと許される



    わがままこそが彼の本質であり、わがままを言わなくなった田之助など
澤村田之助と書いた札をさげた、肉の袋にすぎない)


とか、妻をして、



    私はこんなぬるま湯のような人の女房になったんじゃない、澤村田之助は、自分のためなら女房の一人や二人、笑って踏みにじるような人でなければ、なんて思ってしまうのよ。


と描かれる・・・勝新太郎のような(?)内田裕也のような(??)存在、これを<魔人>と呼ばずしてなんとよびましょう?


本書では<田之助>は物語の中心にはありますが、その心はほとんど描かれません。あくまでも<田之助をめぐる人々>の物語でした。だからこその<魔人>だと思うのですが。


巻末には、元になる短編「狂斎幽霊画考」も収録されています。


他の田之助ものとしては、積ん読状態の山本昌代氏『江戸役者異聞 (河出文庫)
』も読まないとね。『三世沢村田之助―小よし聞書 (文春文庫)』も見つけないとなあ。