読了本ストッカー:あっさり風味の隆伝奇……『駆込寺蔭始末』

駆込寺蔭始末 (光文社時代小説文庫)


隆慶一郎


光文社文庫


2008/6/10読了。


隆慶一郎氏の連作短編集です。


< 縁切寺>として名高い松岡山東慶寺。江戸時代の女性たちのアジールとして隠然たる力をもつこの寺の住持、玉渕尼の用心棒、<麿>の活躍を描きます。


<麿>は御所忍びの元棟梁で、れっきとした公家なのですが、その名は明かされません。時代は八代将軍吉宗の治世。東慶寺の影響力も衰え、その寺法の恐ろしさを知る者も少なくなっています。つまり男子禁制の東慶寺に、武力を以て踏み込もうとしたりする輩が増えているわけです。そんな時に<蔭始末>をつけるシティーハンターが<麿>。元許嫁の玉渕尼を守ることが第一なのですが。ますますパートナーの香第一のシティーハンターみたいですね(笑)。


それにしても、こういう「水戸黄門」的というか「長七郎江戸日記」的というか・・・今はちょっと廃れちゃいるけれど、おうおうオメェラ、ちょっとこの権力を忘れちゃいねぇかい?こちらにおわすは天下の副将軍水戸光圀公にあらせられるぞ、ご老公の御前である頭が高いひかえおろう。こちらにおわすは上様の甥子様、松平長七郎ナガヨリ君なるぞ。そっちがその気なら、こっちは奥の手をだしちゃうぞコラというストーリーは、すっきりしますね、ホント(笑)。日本人のDNAにこのカタルシスは刻みこまれている気がします。


本書は短編集のため、説明が重複するところが多々あり、ちょっともたつきます。網野史観的なものは『吉原御免状』で書きつくしていますしね。


単発ものはだいたい読んだし、そろそろ長編シリーズものをがっつり読みたいなあ。