読了本ストッカー:アメリカの舞城王太郎、コラゲッサン・ボイル。……『ケロッグ博士』

ケロッグ博士


T・コラゲッサン・ボイル


新潮文庫


2007/12/21読了。


翻訳文学ブックカフェ』で知ったT・コラゲッサン・ボイル。この時ボイルについて語っていたのは青山南氏だったのですが、本書の訳者は柳瀬尚紀氏。唯一の文庫作品『ケロッグ博士』を買ってみました。


あの有名な<ケロッグのコーンフレーク>を作った人なんですねぇ。エポック博士みたいなもんか(違う?)。
660ページと厚いし、読むの大変かなあと思っていたのですが、柳瀬氏の力か、ものすごく読みやすい。
「この翻訳で、訳者は従来の翻訳方式を一変する文体を用いた。ケロッグ博士に刺激されたわけではないが、全六五七頁、新しい翻訳矯正文体を実践した」と書かれています。



その夜、発熱が始った。肌が浮腫み、肌の下を一個大隊が行進しているような感覚があって、かと思うと、いまにも窒息しそうに皮膚が収縮する。胃袋が胡桃大に縮んでは、喉もとで傘みたいにぱっと広がる。両足は氷の塊、手はカール用の焼鏝だった。真夜中のキッチンで床に崩れ、四つん這いになり、ひくひく、げろげろ、食堂を抜け、居間へ入り、ディックを驚かせ、石炭入れをひっくり返し、かきむしった腕は、肉屋の包紙に包まれたロース肉のように、血がにじんでいた。


などなど。その畳み掛けるようなリズミカルな文章が、舞城王太郎を思わせました。そ、そんなことない?