読了本ストッカー:フィン、きみのいきつけの男性用品店はいったいどこなんだ?……『見えないグリーン』

見えないグリーン


ジョン・スラデック  ハヤカワ文庫


2007/9/21読了。


密室ミステリアンソロジー大密室』の中で、誰かが言及していたことで知っていた作品です。今見返して見ると、恩田陸氏ですね。しかし、これだけの記述でよく探そうと思ったなぁ・・・。長いこと見つからず、最近ようやく200円で手に入れました。この辺り(←漠然・・・。)の文庫はブックオフだとあんまりないですよね。えらいぞ、ブックセンターいとう。


「Invisible Green」・・・「見えないグリーン」・・・かっこよすぎるタイトルだ・・・「見えないグリーン」・・・(二度目)。
ドロシア・フェアロウ女史は、35年ほど前にともに<素人探偵七人会>を結成していた旧友6名に再会しようと、パーティの招待状を出します。その途端、殺人事件や盗難事件が相次いで・・・とまあ、出足は至って普通。


フェアロウ女史の依頼によって捜査を始めた素人探偵サッカレイ・フィンのキャラが面白いです。



「フィンさん。わたしがなんによらず謎には目がないってことは、もうおわかりのはずですね。あなたもそうだってことはわかってます。だからこそあなたを雇うことにしたんです」
「ぼくを雇う?それでもってぼくのアマチュアとしての立場を台無しにする気ですか?いや、経費は出してもらってもいいですが、それ以上はだめです。そうすればぼくはいやになったらいつでもやめられるわけです」


とか(笑)。さらに服装も・・・奇抜?



「グリーンは正体をつかまれるほど長いことじっとしていることは決してないようだ。神出鬼没さ。<探偵会>の一員でありながら、まったく見知らぬ人間だ。甲の殺人にはある動機を持ち、乙の殺人には別の動機を持っている――ついでに言うと、ダンビ殺しには全然動機がない。彼には共犯者がいることもあれば、いないこともある。ある事件では手段を欠き、別の事件では動機を欠き、そしてまた別の事件では機会を欠いていながら殺しをやっている。彼は壁を通り抜けられるように見える――おまけに、まったく姿が見えない!」


「典型的な事件だ。パルテノンの神殿にも匹敵する事件だ」とフィンは声に出して言った。「いや、そうだろうか?この事件はパルテノンの壮大な列柱のように古典的なのだろうか?それともカンザス・シティの銀行の表構えのように“古典的”ということか――安っぽい、いんちきな、仕組まれたしろものか?」


のようなメタミステリ的な記述を読んで、すわそういう仕掛けか?と目を皿のようにして読みましたが、わりとストレートな本格ミステリでした。


それにしてもミスディレクションの記述や配置がとても上手な作家です。ラストでむちゃくちゃ小さな伏線が回収されていく過程で、「あ~たしかにそんなこと書いてあったな~!」とすべて思い起こせるってのは、とても文章が上手な証拠だと思います。そんなこと書いてあったかな?っていうミステリも多いですもんね。