読了本ストッカー:密室短編ミステリ傑作選!……『密室殺人傑作選』

密室殺人傑作選


H・S・サンテッスン  ハヤカワ文庫


2007/9/16読了。


北村薫師が『ミステリ12ヶ月』で基本図書として挙げていた本書。記述師としては破格の450円という高値で購入!(書いてて悲しい・・・)。ま、105円じゃなかなかないから仕方ないっす。



「ある密室/ジョン・ディクスン・カー
・・・密室といえばカー。らしいですが、記述師、ほとんど未読です。『火刑法廷』が家にあるはずなんですが・・・どこいったかな?ギデオン・フェル博士作品です。フランシス・シートンは誰もいないはずの自室で殴り倒され、昏倒。部屋の出口前には秘書兼タイピストのアイリス・レインと図書係のハロルド・ミルズがおり、誰も出入りはしていない。もう見事な密室状況ですね~。解決もシンプル。犯人の作業と偶然のアクシデントが絡まって、ややこしいことになっているのを解く。これぞ密室ミステリ。


「クリスマスと人形/エラリイ・クイーン」
・・・親子版<間宮兄弟>?(いや、最近DVDみたので)。いつも楽しそうでいいねぇ。クイーンVSルパン的物語です。美術品専門の泥棒コーマスが、デパートに陳列される<皇太子人形>を盗み出すことを予告してきます。はたして、銭形エラリイは<皇太子人形>を守りきることは出来るのか?当然、出来ませんけどね。


「世に不可能事なし/クレイトン・ロースン」
・・・これは面白かった!寡聞にしてロースンはまったく知らず。本編の探偵役は、大奇術師のグレイト・マリーニ。ロースン自身も奇術研究家みたいですね。なんか泡坂妻夫氏を彷彿とさせるなあ。マリーニ作品は長編が4つあるとのこと。探してみようかな?


「うぶな心が張り裂ける/クレイグ・ライス」
・・・クレイグ・ライスといえば『スイートホーム殺人事件』しか読んだことないんですが・・・。しかし最初の数ページでネタバレです~。これは日本語訳の問題かな?被害者が残した最期の言葉が英語なら複数の意味を持って聞こえるのかも知れませんが、日本語ではそのままズバリ!難しいとこです。しかし、それを補って余りあるのが、飲んだくれ(?)の刑事弁護士ジョン・J・マローンの魅力的なキャラです。


「犬のお告げ/G・K・チェスタートン」
・・・ブラウン神父ものです。そういえば『ブラウン神父の童心』以外読んだことないなぁ。


「囚人が友を求めるとき/モリス・ハーシュマン」
・・・これ、密室?(笑)


「ドゥームドーフの謎/メルヴィル・デヴィッスン・ポースト」
・・・アメリカ開拓時代を舞台にした<アンクル・アブナー>シリーズの短篇。密室の古典的名作とのことですが、たしかに。こういうの好きだなぁ。


「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男/ウィリアム・ブルテン」
・・・面白い! <~を読んだ男(女)>シリーズは論創社から出ている『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男 (論創海外ミステリ 68)』に全作(たぶん)収録されている模様。読みたいなぁ・・・。


「長い墜落/エドワード・D・ホック
・・・これが読みたくて本書を買ったようなものなのです。霧が立ち込める中、ビルの21階から飛び降りた男。しかし下にいってみても死体は見つからない。そして3時間と45分後、ようやく落ちてきて、死んだ・・・すごい魅力的だ!わくわくする謎ですね。無機質なビルの描写が、コーエン兄弟の『未来は今』をイメージさせます(適当ですけど)。


「時の網/ミリアム・アレン・ディフォード」
・・・えっと、デスノート


「執行猶予/ローレンス・G・ブロックマン
・・・う~ん、たしかに解説に書かれているように<この手口は、三〇年代中頃という年代を考慮に入れても特別な手口であり、フェル博士が予期しなかったことも許されるような種類である>よね?こんなことがあるなんて知らなかったです。


「たばこの煙の充満する部屋/アンソニイ・バウチャー」
・・・この解決も密室もののひとつの典型ですね。でもそこにはこの作品のポイントはないのかも。


「海児魂/ジョゼフ・カミングズ」
・・・今度の密室は<海>。島にひとつしかない潜水服を着て海に潜った男を引き上げてみると刺殺されていたという魅力的(?)な謎です。


「北イタリア物語/トマス・フラナガン
・・・こ、これは面白い!なんの先入観もなく読んでいただきたい!チェザーレ・ボルジアとか、記述師の伝奇魂を揺さぶるものを感じます。


満足の一冊でした。