読了本ストッカー:ところで・・・小森収って、誰?(勉強不足)……『はじめて話すけど…#小森収インタビュー集』

はじめて話すけど…―小森収インタビュー集


小森収  フリースタイル


2007/9/11読了。


図書館で借りました。パラパラっとめくったら三谷幸喜氏の名前が見えたので。
タイトルどおり、小森収氏によるインタビュー集です。




  • 各務三郎       「ミステリがオシャレだったころ」

  • 皆川博子       「皆川博子になるための136冊」

  • 三谷幸喜       「理想の作戦ものを求めて」

  • 法月綸太郎   「本格推理作家はアントニー・バークリーに何を読みとるのか?

  • 石上三登志   「札つきファンのミステリの接し方」

  • 松岡和子       「戯曲を翻訳する幸せ」

  • 和田誠           「バタくささのルーツを探る」

まず面白かったのは、皆川博子氏のインタビュー。「皆川博子になるための136冊」と銘打っているにも関わらず、そのほとんどに触れられていないのが、残念と言えば残念。ページ数からいえば仕方ないんですが。小森氏も書いているように



ここに登場する本を浴びるように読めば、もちろん、あなたも皆川博子になれるだろう。皆川博子さんほどの才能さえあればの話だが。


ですね(苦笑)。それにしても子どもの頃に読んだ本のタイトルはまだしも、版元名とか良く覚えてるなぁ・・・感心します。


三谷幸喜氏のインタビューは、氏が<作戦もの>と呼ぶ系統の映画について熱く(?)語ったものです。<作戦もの>の定義とは、





    1. タイトルに「作戦」が入る。


    2. できるかぎり奇想天外な作戦がいい。


    3. 作戦を遂行する人たちの視点から見たい。


    4. できるだけキャラクターを掘り下げない。


    5. ラストは作戦が成功しなければならない。


    6. 彼らはプロフェッショナルでなければならない。


    7. なおかつ戦争ものではない。

というもの。『36時間』『スティング』『トプカピ』など見てみたいなぁ。


トプカピ』→DVD出ていないみたいですね。



三谷氏はさらに『スパイ大作戦』について熱く(こちらはかなり熱く)語ります。「密室の金塊」「欺瞞作戦」「焦土作戦」・・・読んでるだけで見たくなります!DVDボックスになってるようなので・・・レンタルにあるかな?



「古畑」なんかでも、正味四十五分で、犯人の人生なんて描きようがないんですよ。無理なんです。それは犯人役でしかないから。記号でしかないんですよね、犯人って、いつも。それを分かった上で喜んで演じてくれる俳優さんと、こんなうすっぺらな役はできないという俳優さんと、いるんですよ。薄っぺらいことは確かに薄っぺらいんですけど、だからこそ、上手な俳優さんがやらないと、ほんとに薄っぺらいままになっちゃうというのが、あるじゃないですか。だから僕はむしろ巧い俳優さんにやってほしいいんです。 (中略) とくに「欺瞞作戦」のマーチン・ランドーはお薦めです。マーチン・ランドーが、変装じゃなく、メイクしないでふたりの人間を演じ分ける。これはすごいですよ。また、そういうところにやりがいを見つけるような俳優さんが、作戦ものには向いているんですよ、きっと。


さらに最近気になっている<翻訳>についてのインタビューは、戯曲の翻訳家であり、シェイクスピアの全集で有名な松岡和子氏のもの。



そうなんです。役者ってすごいんですよね、誤訳が分かっちゃう。原文を読まないのに、誤訳を指摘されたことは、私にもずいぶんあります。それは誤訳を指摘するというんじゃないの。「この言葉から次の言葉にかけて、なにか、こう、気持ちが流れていかないんだけど、これは、どういうことなんでしょう」というふうに、説明を求めてくるわけ。それで、ちょっと待ってくださいって言って、原文を読んでみると、私が間違ってた。 (中略) 役者さんはひとりで一役やるわけでしょう。その読み込みの深さったらない。私、これだけいろいろそういう経験してくるとね、いまや、一回役者の体を通らないうちに活字にするのは怖いです。


・・・役者ってすごいなぁ・・・。シェイクスピアの翻訳についても、その重層的な言葉の意味を、一枚ずつベールをはがすように探っていく過程が言及されていてとてもエキサイティング!
実家の母親が昔からシェイクスピアの文庫をよく読んでおり(いまだに読んでいる様子)、よくそんなに長いこと読めるなぁと思っていたのですが・・・こんなに深いんですね、シェイクスピア。訳注がむちゃくちゃ豊富らしい、ちくま文庫版の松岡シェイクスピア、読んでみるしかあるまい!