読了本ストッカー:伝奇時代小説の頂点(の一角)!……『産霊山秘録』

産霊山(むすびのやま)秘録


半村良  ハルキ文庫


2007/9/2読了。


もったいなくてとっておいたのですが、ついに読んでしまいました『産霊山秘録』!お、面白い。五つ星でしょう、文句なく。


連作集とも言える本書。「神変ヒ一族」「真説・本能寺」「妖異関ヶ原」「神州畸人境」「江戸地底城」「幕末怪刀陣」「時空四百歳」「月面髑髏人」の8篇からなります。
日本に古来から存在する<ヒ>と呼ばれる一族は、天皇家に日本の支配を託した、つまり天皇家の上位に位置する一族と言われています。「神変ヒ一族」は室町末期から戦国時代にかけての物語ですが、既にヒ一族は黄昏の時期を迎えています。その血は薄くなり、里者(一般の人々のこと)になって生きる者が増え、山々を巡って人々の願いを叶える<芯の山>を探している古来の生き方をする者は激減しています。テレポート、念力などの超能力を持つものもしかり。守るべき天皇家が衰退しているのだから仕方ないんですが。
そんな中、<ヒ>の長である随風は、朝廷の要請を受け、織田信長に天下を取らせるべく、活動を開始します。と書くと、忍者の軍団があの手この手で・・・と考えがちですが(読む前は記述師もそういう物語だろうと思ってました)、たしかに後半になってくるとそんな感じになるのですが、基本的には諜略によって戦わずして勝つという方式。忍びの元締(?)でもある<ヒ>が全ての忍びを雇い集めることによって、他の武将たちの諜報力を削ぐとか(むちゃするなぁ)。
そうこうしている間に、壊滅的な悲劇が起こったりするわけです(はしょっちゃった!)。


各編のタイトルを見れば判るように、戦国から現代までを網羅して、<ヒ一族>の足跡を追う物語です。それにしても突拍子もない内容ですが、読んでいると突拍子のなさが本当に感じられません。ところどころに出てくる資料とか、蘊蓄とかが何か信じる気持ちにさせるんですよね。


個人的には<明智光秀坂本龍馬>という伝奇的流れを知らなかったので(伝奇好きとか言えねぇな・・・)、おぉ・・・と感動しました。一豊よ、お前もか。よく考えてあるなぁ・・・。


あと「神州畸人境」に、<目の不自由な皇子を祖とする滋野一族、海野家>というのがでてきて、どっかで最近聞いたなぁと思ったら、おぉ!先週『風林火山』でやってたじゃないか、真田“佐々木蔵之介”幸隆が! タイムリーだなぁ。


「時空四百歳」「月面髑髏人」あたりになってくると、話が駆け足気味になるのですが、それでも面白い! 笠井潔氏だったか・・・天皇制の問題が変質してから、半村氏のような<大きな物語>が機能しなくなったというようなことを書かれていましたが(かなり適当です)、確かにね。逆に今だからこそとも言えますけれども。


残り1冊まで集めた<嘘部>シリーズと、『石の血脈』と、<妖星伝>シリーズ・・・あ、あと<岬一郎>シリーズと<○○伝説>シリーズ(?)と・・・全部集める事に(改めて)決定!


 


話は全然変わりますが、本書を読んでるとき「これって有名な話(伝奇ファンにとって)かな?」と疑問に感じた点を検索していたら発見したのが、こちらの『時代伝奇夢中道 主水血笑録』さん。以前もなにかの検索でこちらの『妖々日本史』のほうは拝見した事があったのですが、ブログは初めて知りました。・・・す、すごい情報量だ。さっそくトップページの特別企画<入門者向け時代伝奇小説五十選>の中身をメモメモ。うぉー知らないのがたくさんある~(泣)。すごく読みたいのが・・・シリーズとして挙げられているものも含めてとりあえず40冊ほど(泣)。気長に集めましょう・・・。
伝奇小説って、裏表紙の説明だけじゃ面白いのか判断が付かないことが多々あるので、こういった読み巧者な方に導いていただけると非常に助かります。
とりあえず、昔のエントリも片っ端から読んでいきますので、宜しくお願いいたします主水様。