アーサー・C・クラーク ハヤカワ文庫
2007/7/24読了。
名作<宇宙の旅>シリーズも『2001』『2010』『2061』『3001』と読んできて、ラストは本書。映画製作の過程で削られたエピソードをまとめたメイキング的作品です。決定脚本というわけではなく、断片をつなげたもの。したがって同じ場面を繰り返し設定を替えて(例えば、ボーマンしか生き残らないパターン、乗組員がほかにも生き残っているパターンなど)語られます。
というわけで、われわれの抱える最大の問題は、この先数年のできごとによって、時代遅れにならない――それどころか、爆笑ものにならない――ストーリーをひねりだすことだった。
訳者の伊藤典夫氏も書かれていますが、「クラーク節」とでもいうべき語り口調が素敵です。クラーク自身も書いているように説明調なSFほどうざいものはありませんから。
SF作家が一般向けにものを書こうとするとき直面するのは、どこまでを説明し、どこまでを周知の事実として扱うかという問題である。読者をまごつかせてはいけないし、この小説ジャンルによくある体のいい講義(「では、お聞きしますが、教授・・・」)におちいることも避けなくてはならない。
「前哨」も収録されていてお得な気分。しかし新訳のため『前哨』のレビューでエントリタイトルに使用したお気に入りのフレーズ「すみませんな、わたしもこのへんは不案内でして」が「失礼、わたしもここでは他所者でして」になっていてちょっと残念。