グレアム・グリーン ハヤカワepi文庫
2007/4/2読了。
初の〈グレアム・グリーン・セレクション〉です。『第三の男』を探していたのですが、本書を見つけちょっと買ってみました。こういう色使いの表紙、好きなんです。
グレアム・グリーンと言えば『第三の男』だと思ってたんですが・・・裏表紙にも見返しの著者解説にも、まったく触れられてませんね(あれ?)。
イギリス情報部や外務省に勤務し、スパイ活動に従事していたらしいこと、イギリス国教徒からカトリックに改宗した経験があることから、それらにまつわる作品が多いそうです。ちなみに、各編の扉に訳者による解説が書かれているのですが、これがないと読み解けません、記述師の場合(涙)。
「廃物破壊者たち」
・・・アンファンテリブルというか、ダークなマガーク探偵団というか・・・(?)。
「特別任務」
・・・フェラーロ&スミス商会のウィリアム・フェラーロ氏は、副秘書のミス・ソーンダースに、教会を訪問して死後の罪の軽減を獲得する“免償”を得るという“特別任務”を与えていまが。そんな制度あるんだ。グリーンは揶揄して書いたようです(解説によると)。ま、人を使って罪を免じてもらおうなんて考える人は、懲りない人ですわな。
「ブルーフィルム」
・・・訳者は「さすが酸いも甘いも噛み分けた(たぶん)人間通のグリーンならでは。読んで訳してしびれました。」とのことですが・・・う~ん、記述師はちょっと苦手。
「説明のヒント」
・・・訳者曰わく「カトリック作家としてのグリーンが前面に打ち出された作品」。
すぐに気づいたが、彼はローマカトリック教徒だった。つまり、なんと言ったらいいのか、万能にして偏在する神の存在を信じている人物だった。それに対してわたしは不可知論者としてひとくくりにされるタイプの人間だ。
なのにグリーン自身がカトリックという面白いですね。
「ばかしあい」
・・・こんなことできるのかなあ?イギリスならでは、でしょうね。でも好きです、こんな話。しょ~もないばかしあいですが。
「働く人々」
・・・これは面白い!ラストの一文がいい!
蒼白い広大な夜空に、細く白い線が何本か、燐光を放つカタツムリの通り道のように浮かび上がり、仕事を終えた男たちが帰途についたことを物語っていた。
仕事ってとこがね。『となり町戦争』をちょっとイメージしました(読んでないけど・・・あくまでイメージ、イメージ)
「能なしのメイリング」
・・・声帯模写をする腹(笑)を持ってしまった男の悲劇を描く作品。こういうのも書けるんだ。
「弁護側の言い分」
・・・なんじゃそりゃ、のリドルストーリー(?)。
「エッジウェア通り」
・・・かすかに筒井康隆の香り?『鍵』に載ってたあの話・・・え~と。
「アクロス・ザ・ブリッジ」
・・・これも好きです。株主をだまして大金持ちになった男がメキシコに逃げてきて、そこにずっと座っているお話(はしょりすぎ)。刑事も間抜けすぎ。
「田舎へドライブ」
・・・よくわからん。読むのめんどくさくなってきた。
「無垢なるもの」
・・・最後の一文が、自分を省みて「汚くなったなぁ」と哀しくさせる短篇。元気があるときに読もう。
「地下室」
・・・決して子どもは無邪気じゃないし、「無垢なるもの」の大人のほうがよっぽど無邪気だと思わせる作品。ダークなホームアローンです。
「ミスター・リーヴァーのチャンス」
・・・上手く(?)落ちまでついています。
「弟」
・・・作品が書かれた背景が解説されていなかったら、まったくわからんかっただろうなぁ。でもそれに縛られてしまうのもなんだかなぁ。
「即位二十五年記念祭」
・・・えっと・・・。
「一日の得」
・・・あ~もうよくわからん。
「アイ・スパイ」
・・・解説を読んだんですが、え~どこからそんなこと読みとけんの?という感じでした。
「たしかな証拠」
・・・なんかほんとに、筒井康隆の作品みたいですね~。ネタばれしそう。これは面白い。
「第二の死」
・・・この辺からななめ読み。
「パーティーの終わり」
・・・読むの面倒くさくなってきた。
というわけで、相性がちょっと悪いか。
長編の『第三の男』、スパイ小説の傑作中の傑作(と書いてありました)『ヒューマン・ファクター』を探そう!