読了本ストッカー:新しい世界へ!……『すばらしい新世界』

すばらしい新世界


2006/11/28読了。


池澤夏樹氏の著作は、『夏の朝の成層圏』『バビロンに行きて歌え』『スティルライフ』『真昼のプリニウス』『マシアス・ギリの失脚』『花を運ぶ妹』の順番に読んできて本書で7作目です。『夏の朝の成層圏』を読んだ時には、読解力がなかったのかもしれないけど、なにか“きれいごと”のような感じがして好きになれなかったのですが、読むほどにしっくりきて『マシアス・ギリの失脚』『花を運ぶ妹』の2作品は5つ星でした。今作はどうでしょうか?


風力発電の技術者である天野林太郎に、途上国支援のNGOに勤める妻・アユミ、登校拒否になったこともあるけどとてもいい息子・森介。・・・ツボです、設定だけで既に(苦笑)。
息子が登校拒否になった時に、


「学校側は子供がわるい親がわるいと言わんばかりで、林太郎とアユミは自分たちの育てかたがいけなかったのかとしばらく悩んだ。話を聞く、説明する、お互い納得する。それを重視しすぎた。世の中には言葉抜きで服従するしかない場合もあることを教えなかった。インテリ育児の典型だと思った」


と反省する場面や、環境問題に取り組むアユミが自分が恵まれた生活をしていることに罪悪感(?)を覚え(例えば車を持っていること)、しかしそれを放棄しても(例えば車を手放すこと)自己満足にしかならないと悩む場面、そんなアユミに対して


「日常生活に使命感を持ち込んじゃだめだよ。それは聖者がすることだ」


とアドバイスする場面。しょっぱなから子育て進行形の私にも考えさせられる場面が頻出です。


最近私の家でも生協に加入してまして、石鹸洗剤などについて妻とも話したところだったので、自分の考えをまとめるのにも役立ちました。


 「結局、自分は人生の一つの橋を渡ったのだろう。地味だけれど新しい世界に入ったのだろう」