読了本ストッカー:狼狽しまくり、亜愛一郎!……『亜愛一郎の狼狽』

亜愛一郎の狼狽


2006/11/13読了。


実は以前に一度読んだのですが、これは3作連続で読んだ方がいいらしいと聞いて、2作目以降はストップしてました。最近ようやく3作目の『亜愛一郎の逃亡』を手に入れたため読書再開。むう、全然覚えていない…(汗)。


 「DL2号機事件」・・・泡坂氏のデビュー作です。DL2号機といってもあまり事件には関係ありません。爆破予告のあった飛行機から降りてきた男がこける真似をしたのを見ただけで、殺人事件を予見してしまう亜愛一郎…ハリィ・ケメルマンも真っ青の論理(?)ミステリ。発表が1976年。人間の心理を絡めた推理の仕方は30年前には新しかったのでしょうか(適当発言)。
「右腕山上空」・・・お笑い芸人をひとり乗せて飛び立った製菓会社の宣伝用熱気球を降ろしてみると、芸人が撃ち殺されていた、というミステリのお手本のような設定です。トリックとしては一番記憶に残ります。気球といえば、大阪圭吉氏の短編に面白いのがあった気が・・・(うろおぼえ)。
「曲がった部屋」・・・ピサの斜塔のように曲がり、開発計画からも外された寂れた団地。“マイソウムシ”という虫の黒に黄色い腹というグロい色彩や、団地の壁にビッシリ(う~トリハダ~)ついているというビジョンが気持ち悪い…。泡坂氏はこういう何気ない描写がとても上手です。解決編も非常に明快で素敵です。
「掌上の黄金仮面」・・・巨大仏像の掌上で踊り狂っていた(…。)黄金仮面(…。)が公衆の面前で至近距離から撃ち殺されるというなんとも言えない事件・・・。この無茶苦茶な設定を読ませるのが泡坂マジック。仏像建立の理由などコネタが満載です。
「G線上の鼬」・・・市道G号線でおこったタクシー強盗の謎を、亜愛一郎が解き明かします。タクシー運転手がなぜか語学ペラペラ、など全然関係ないじゃん・・・などの設定が光ります(?)。
「掘出された童話」・・・泡坂氏お得意の暗号もの。『斜光』所収の「かげろう飛車」の暗号もすごいと思いましたが、この暗号も勝るとも劣らない出来。今これに匹敵するのは、倉坂鬼一郎の『内宇宙への旅』くらいでしょうか(笑)。
「ホロボの神」・・・今回は、戦時中南海の孤島で行った殺人事件を、亜愛一郎が解き明かします。ほんとに様々な設定をしますねぇ。
「黒い霧」・・・題名を聞いたら疑獄事件を想像しますが・・・こちらに出てくるのは文字通り“黒い霧”。読んでのお楽しみです。