読了本ストッカー:「芸術とは隠蔽すること・・・」……『フリッカー、あるいは映画の魔㊦』

フリッカー、あるいは映画の魔〈下〉


2006/11/2読了。


海外伝奇ミステリの傑作もいよいよ下巻です。
前半でアングラ映画についてジョニーが考察するところは大変興味深く読みました。映画論としてもとても秀逸。また中盤で、ジョニーがカタリ派の宗旨のひとつについて劇的に理解する場面は、薄っぺらな悪の論理とは一線を画すものを感じます。


 某登場人物の言葉


「芸術家のだれしも異端なのだよ。芸術家は世界のすべてをメタファーに転化し、それと遊びたわむれるのをよしとする。(中略)芸術に求められているのはただひとつ、人類の終焉を瞑想せよ。そして、あらゆる愚考を笑い飛ばせ。」


「邪悪なるものを真に理解している人間はきわめてまれだよ。われわれが周知の悪について語れば、たしかに衝撃を受けるだろうが、たいていの者はその邪悪さを些細で皮相な汚点だと考えたがるものだ。永遠にありつづける必然の存在ではなく、太陽をつかのまカゲらせる雲間のようなものと、な。だが、ちがう。悪は太陽の等価物、光明のない暗夜なのだ」


ともに心に残りました。
海外の伝奇ものは案外読んでいなくて、ネヴィルの『エイト』くらいでしょうか。ラヴクラフトもまだ読んでないし・・・読書傾向を伝奇・ホラーに特化するか・・・要検討(先立つものが・・・)。