読了本ストッカー:加藤文太郎、山に登る。……『孤高の人㊤』

孤高の人 (上巻)
2006/9/6読了。


不世出の登山家・加藤文太郎の人生を描く山岳小説。
加藤は神港造船所の技術研修生として働きながら、教官の外山三郎に誘われて山歩きを始めます。全てを山にかけるその姿勢は、きちんと仕事をして誰にも迷惑がかからないようにしているにも関わらず、周囲の反発を招きます。
夢枕獏氏の『神々の山嶺』に出てくる羽生丈二を彷彿とさせます(勿論本書のほうが古いのですが)。
上高地の山小屋の主の言葉、「常さんは孤独を愛していながら、一方では、しきりに人を求める淋しり屋に違いない」が非常に痛々しく響きます。


富山から長野へのアルプス越えを果たした日、数少ない理解者の一人、藤沢久造との会話、


「藤沢さん、ぼくはいったいどうしたっていうんです」
「どうもしないさ、きみはおれと一緒にビフテキを食っているだけのことだ。飯を食ったら下宿へ帰って寝るんだな」


男と男の会話ですね~。